青山劇場

シレンとラギ

久々の中島かずき脚本の劇団☆新感線いのうえ歌舞伎。

劇団新感線の芝居を見るようになったのは「髑髏城の七人」(青髑髏・赤髑髏)という2バージョンを続けて上演したとき以来。もっとも、水野美紀目当てで観に行ったわけで、あまり新感線フリークというわけでも、ミュージカルも、大きな芝居も(小さい芝居も)興味があったということではなかった。

舞台が綺麗なこと、水野美紀が男前なことに惹かれたけど、一番の感動は「舞台挨拶」の格好良さだった。圧倒的だった。いまだに、あの舞台挨拶を越える舞台はない(笑)。

この会の新感線の舞台は(私の中では)2つめの転換点だった。
1つめの転換点は舞台装置の革命が起きた時代があった。
舞台装置には「プロジェクション」を多用してテクスチャ-を変化させるというすごい技を見せてくれた。昔(1995年頃)ジョージコーツパフォーミングアーツという団体がやったマルチメディアオペラなんてものがあったけど、まさに、そんな感じのものを完成度を高めたそんな感じ。
http://www.bara-samu.com/


今回の舞台は、その、青髑髏のような「新国立劇場中劇場」のような贅沢な舞台装置がないことを逆手にとってなんだろうけど、単純だけど「ぐっとくる」舞台への「入り」「出」を作りだしたんだと思った。

で、
永作は細い・小さい・可愛いそんな40歳・・・。今回の役も、とある事件(仕事)から20年たって・・・。もう一度ミッションが下った。というところから。
そこでその使命を果たすべく、門をくぐる・・・・「どーん」とタイトルが出てくる。
ここで号泣しそうになってしまった。
始まって15分くらいか・・・。
満足して思わず帰りそうな。
流石、いのうえ歌舞伎。

今回は「唄」「踊り」は控えめというか、第一幕にはなかった。

で、衝撃の事実が発覚・・・!!!
役者の動きが止まり、幕が下りた。
ここまでの注目するべきとことは
・高橋克実(ごだい様・・・後醍醐天皇)
・三宅弘城(二代将軍・・・足利義詮)
の圧倒的な役者ぶり。
よかった。ここで満足してはいけなかった。この2人の出番は第二幕で爆発するのだった。

第二幕になって
壮絶な結末に向かっていった。
ラギの運命や如何に・・・・。

エンディングは多分、今までの「いのうえ歌舞伎」とは違うのかなと感じた。
安っぽいことばでいうと「希望」というものが加えられたかのような気がする。
いままでのいのうえ歌舞伎はどんどん「墜ちていく」という作りで、そこに
救いは求めない潔さがあったような気がするが、いや、そうでもないのか?

私の満足度としては
永作が可愛かったことと、
石橋杏奈が可愛かったことが◎。
いや、そこはとても大事なところであって。

藤原竜也扮する「ラギ」の永作博美扮する「シレン」への愛
古田新太扮する「京極」の娘への愛
この辺が物語りの重要なテーマとなっている。
中島かずきは仮面ライダーの脚本も書いていたみたいで、
そこに、それまでの「罪」と「贖罪の思い」、親子の愛と、人としての愛そういうことが見事に交わって、どん底の中で明日への希望を持てた終わりに大満足なわけだ。