ベルが鳴る前に

ペンギンプルペイルパイルズ
ベルが鳴る前に
作・演出:倉持裕
出演:小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、近藤フク、吉川純広、奥菜恵 ほか

今までみたPPPPの芝居で一番登場人数が多い芝居だ。(客演だけど)やっぱり、奥菜恵はいい。とてもいい。今回の芝居は一人(タマキング)以外は、一人二役だったようで(大体正しいと思うんだけど自信はない)、そのどちらの役も「華」があってよかった。奥菜恵芝居は、阿佐ヶ谷スパイダースで見たのだけれど、それも抜群だった。役者ってのはいい演技ができればそれでいいんだって思った瞬間だった。ベニサンピット最後の講演でなんかそれもあいまったということもあるのかもしれない。
基本、芝居は役者がよければそれでいいんだけど、この芝居、シナリオもなかなか見事な作りで、乱暴に言うと「ゴドーを待ちながら」「走れめろす」「渚にて」「ノアの方舟」とか、いろいろな話がSFと神話とがあいまってできあがっているようで「イロアセル」と似た匂いがあった。
ホムンクルス(錬金術)」vs「科学技術」、「知らないことの幸運」vs「知っていた上での間に合わない」「自分の目標のために邁進」vs「困っている人を助けながら生きていく」、「選ばれた人」vs「全ての人を」、あたりが、この芝居の構成要因かと思う。で、いつ来るかわからないその日のために「万端の準備をしておく」「全力でやりきること」が・・・。もっとも、見事なオチがあって、帰りの電車では、後ろの男性が「あれはないだろう」と言っていたのも半分賛成・半分苦笑という感じ。
舞台セットには「ロベルトの操縦」同様、主題が真ん中にあって・・・。この舞台転換には痺れた。そして、そのスピード感を出すために「街灯」を動かす様が見事だった。そして、タマキングが最後置き去りにされるところに妙技があった。なかなかいい大道具さんがいるもんだ。

いつあるかわからないことのために「指名されて待機」するという狂気。生き残るための2つの行動と、それを取り巻く2つのリアクション。この辺はいい加減に描いていることにも好感が持てた。